1887年ごろから2026年まで・2026年8月5日確認
定年は55歳だった?60歳・65歳・70歳へ変わった高年齢者雇用の歴史年表
かつて一般的だった55歳定年は、どのように60歳へ延びたのでしょうか。そして、現在よく聞く65歳・70歳は、会社の定年年齢を意味するのでしょうか。このページでは、企業の定年慣行、法律、年金との関係、定年後の仕事探しを分けながら、働く人に関係する高年齢者雇用の変化を年表でたどります。
55歳は長く一般的だった企業慣行、60歳は定年を設ける場合の法定下限、65歳は雇用確保措置の義務、70歳は就業機会確保措置の努力義務です。現在も、すべての会社に65歳定年や70歳定年が義務付けられているわけではありません。
最初に区別する
55歳・60歳・65歳・70歳は何が違う?
ニュースや求人票では年齢だけが目立ちますが、「企業で多かった年齢」「定年の最低年齢」「雇用確保」「就業確保」を分けると、制度の変化が見えやすくなります。
会社が定年を設けること自体は法律上の義務ではありません。ただし、定年を設ける場合は原則60歳以上とし、65歳未満の定年を定めている会社は、65歳までの雇用確保措置を講じる必要があります。
年表の前に
なぜ昔は55歳定年が多かったの?
日本で最初の定年制は、1887年ごろに海軍火薬製造所が設けた55歳定年だといわれています。大正期から企業の人事・労務管理制度が整うにつれて定年制が広がり、大企業では1920年代から普及しました。戦後も55歳定年が長く一般的でしたが、これは全国一律の法律で55歳退職を命じた制度ではありません。
当時の雇用慣行、年功的な賃金制度、年金制度、平均寿命や人口構造などが重なっていたため、理由を一つに絞ることはできません。1941年の労働者年金保険法では養老年金の支給開始年齢が55歳とされ、1954年の厚生年金改正では男性の支給開始年齢を段階的に60歳へ引き上げることが決まりました。雇用と年金の年齢をどうつなぐかは、その後も制度改正の大きな課題になります。
「多くの会社で55歳定年が採用されていた」は正しい一方、「昔の法律で全員55歳定年だった」は正しくありません。この違いを押さえて年表を見ると、60歳・65歳・70歳への変化を誤解しにくくなります。
まず全体像
高年齢者雇用を変えた5つの段階
定年年齢だけが順番に上がったのではありません。企業慣行から法律へ、さらに定年後の再雇用や多様な就業へと、働き続ける仕組み自体が変わってきました。
- 155歳定年企業の人事制度として普及
- 260歳を推進国が定年延長を支援
- 360歳を義務化定年を設ける場合の下限へ
- 465歳まで雇用再雇用を含む雇用確保措置
- 570歳まで就業雇用以外も含む努力義務
1887–1970
55歳定年が企業へ広がる
定年制が一部の組織から大企業へ広がり、戦後は55歳が長く一般的だった時代です。海軍火薬製造所が55歳定年を導入した最初の例といわれる
日本で最初の定年制は、海軍火薬製造所が1887年ごろに設けた制度だといわれています。職工規程で満55歳を「停年」とし、その年齢に達した職工を退職させる仕組みでした。「日本初」には資料上の留保があるため、この年表でも断定せず、定年制の起点として紹介します。
大企業を中心に定年制が広がる
企業規模の拡大とともに、採用から退職までを管理する人事・労務制度が整えられ、定年制が大企業を中心に普及しました。ただし、すべての企業に同じ制度があったわけではなく、中小企業や職種によって働き方は異なりました。
55歳定年が長く一般的になる
戦後の日本では、長期雇用や年功的な賃金制度と結びつき、55歳定年が長く一般的でした。一方で、定年後に別の会社へ移る人や再雇用される人もおり、「55歳になれば全員が仕事を完全に辞める」という意味ではありません。
定年企業のうち、55歳以下定年が約6割
定年を設けている企業のうち、55歳以下定年は58.6%、60歳以上定年は23.1%でした。55歳前後がまだ主流だった一方、平均寿命の伸びや高齢化を背景に、60歳まで働ける環境づくりが政策課題になっていきます。
1971–1985
国が60歳定年を後押しする
法律、助成、地域就業の仕組みが作られ、企業の定年も55歳から60歳へ動き始めました。現在の高年齢者雇用安定法につながる法律が公布される
「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」が公布されました。当初は中高年齢者の雇用率や再就職促進などを扱う法律で、現在の高年齢者雇用安定法の前身です。ここから、定年延長と高年齢者の雇用を国の制度として整える流れが本格化します。
定年延長への援助・奨励が進む
雇用対策法の改正で定年延長への国の援助が位置付けられ、定年延長奨励金も設けられました。この段階では、60歳定年を企業へ一律に義務付けたわけではありません。助成や行政指導を通じて、55歳から60歳への移行を促す時期でした。
シルバー人材センターの前身が生まれ、全国へ広がる
1975年、東京都江戸川区にシルバー人材センターの先駆けとなる「高齢者事業団」が誕生しました。1980年度から国の補助事業として「シルバー人材センター」の名称で全国展開され、定年後に地域の臨時的・短期的な仕事へ参加する入口が広がります。
60歳以上定年の企業が過半数になる
定年を設けている企業のうち、60歳以上定年は55.4%となり、過半数を超えました。55歳以下定年は27.1%まで低下しています。翌年に60歳定年の努力義務が設けられる前から、企業の実態はすでに60歳へ動いていました。
1986–1998
60歳定年が努力義務から法的義務へ
まず企業へ努力を求め、その後に60歳未満の定年を原則として認めない制度へ進みました。60歳定年が努力義務になる
前身法が抜本改正され、現在の「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」へ名称が変わりました。事業主は、定年を設ける場合に60歳を下回らないよう努めることとされます。同じ改正で、シルバー人材センター事業も法律に位置付けられました。
定年後、65歳まで働くことを視野に入れ始める
定年に達した人が希望する場合の再雇用が努力義務となり、65歳までの継続雇用を推進する方向が示されました。「定年年齢を上げる」だけでなく、いったん定年退職した後に再雇用する仕組みが、高年齢者雇用の柱になっていきます。
60歳定年の義務化を決め、65歳までの継続雇用を促す
高年齢者雇用安定法が改正され、定年を定める場合は60歳を下回ることができないとする義務化が決まりました。施行は準備期間を置いた1998年です。同年の年金改正で厚生年金の定額部分を65歳へ段階的に引き上げることも決まり、60歳から65歳までの雇用と所得が重要な課題になりました。
60歳未満の定年が原則として認められなくなる
60歳定年の義務が施行されました。正確には、すべての会社に60歳定年を設けさせる制度ではなく、「定年を設ける場合、その年齢は原則60歳以上」という規定です。施行時には、60歳以上定年の企業割合は93.3%まで上昇していました。
2000–2013
65歳までの雇用確保が義務になる
65歳定年だけではなく、定年廃止や継続雇用も含めて、65歳まで働ける制度を整える段階です。65歳までの雇用確保措置が努力義務になる
定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止などによって、65歳までの雇用機会を確保することが努力義務になりました。ここで重要なのは、「65歳定年」だけを求めたのではなく、会社の事情に応じた複数の方法を認めたことです。
65歳までの雇用確保措置を法的義務へ
改正法により、65歳未満の定年を設ける事業主は、定年引上げ、継続雇用制度、定年廃止のいずれかを講じることになりました。ただし、当初は継続雇用の対象者を労使協定で定めた基準により限定できる仕組みも設けられていました。
62歳・63歳・64歳・65歳へ段階的に引き上げる
2006年4月に雇用確保措置の義務化が始まり、対象年齢は62歳からスタートしました。2007年に63歳、2010年に64歳、2013年に65歳へ引き上げられます。厚生年金の支給開始年齢の引上げに合わせ、雇用と年金の空白を生じにくくする段階的な設計でした。
継続雇用の対象者を限定できる仕組みを廃止する
2012年の改正で、継続雇用制度の対象者を労使協定の基準で限定できる仕組みが廃止され、2013年に施行されました。ただし、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢に達した人には旧基準を使える12年間の経過措置が設けられ、完全な移行は2025年まで続きます。
2020–2026
70歳までの多様な就業機会へ
65歳までの雇用確保はほぼ定着し、次は雇用以外も含めた70歳までの就業が政策課題になっています。70歳までの就業機会確保が努力義務になる
2020年の法改正が2021年4月に施行され、70歳までの就業機会確保措置が事業主の努力義務になりました。選択肢は、定年引上げ、定年廃止、継続雇用に加え、継続的な業務委託契約や社会貢献事業への従事です。70歳定年や70歳までの雇用を一律に義務付けた制度ではありません。
65歳までの制度はほぼ定着、70歳までの制度は移行途中
2025年3月末に継続雇用の旧基準に関する経過措置が終了しました。同年6月時点で、従業員21人以上の企業の99.9%が65歳までの雇用確保措置を実施し、70歳までの就業確保措置を実施した企業は34.8%です。2026年度からの新しい基本方針でも、70歳までの就業確保と高年齢者の再就職支援が引き続き進められています。
数字で見る転換
55歳から60歳へ、そして65歳以降へ
調査対象や集計条件が同じではないため、厳密な連続比較ではありません。それでも、各時点で定年制度がどこまで変わっていたかを知る目安になります。
55歳以下定年 58.6%
定年を設けている企業のうち、55歳以下がまだ約6割を占めていました。
60歳以上定年 55.4%
60歳定年の努力義務が始まる直前に、60歳以上が過半数へ達しました。
60歳以上定年 93.3%
60歳定年の法的義務が施行された時点で、企業の制度もほぼ60歳以上へ移っていました。
65歳以上定年・定年廃止 34.9%
65歳までの雇用確保は99.9%でも、65歳以上定年・定年廃止は約3分の1です。
混同しやすい制度
定年年齢と年金の受給開始年齢は同じではない
定年は会社との労働契約が一定年齢で終了する仕組み、年金の受給開始年齢は公的年金制度の仕組みです。別の制度ですが、年金の支給開始年齢が引き上げられる中で、退職から年金受給までの収入をどう確保するかが課題となり、60歳から65歳までの雇用政策が進められました。
年金を受け取りながら働く場合の扱いは、年金の種類、年齢、賃金、勤務時間、加入状況などで変わります。求人条件が分かった段階で、勤務先、日本年金機構・年金事務所、ハローワークへそれぞれ確認してください。
2026年現在
求人票や就業規則では、年齢だけでなく制度名を見る
「定年60歳・再雇用65歳」など、定年年齢と継続雇用の上限年齢は別に記載されます。再雇用後の働き方も、定年前と同じとは限りません。
スマホでは表を横にスクロールできます。
| 確認する言葉 | 現在の位置付け | 働く人が確認すること |
|---|---|---|
| 定年 | 会社が定める場合は原則60歳以上。定年制がない会社もあります。 | 定年の有無、年齢、退職日、対象となる従業員 |
| 65歳までの雇用確保 | 定年引上げ、定年廃止、継続雇用のいずれかを講じる義務があります。 | 再雇用の有無、雇用形態、賃金、勤務日数、仕事内容、更新条件 |
| 70歳までの就業確保 | 事業主の努力義務。雇用だけでなく、業務委託等を含みます。 | 雇用契約か業務委託か、報酬、保険、事故時の扱い、終了条件 |
| 希望者全員 | 継続雇用を選ぶ場合、原則として希望者全員を制度の対象にします。 | 本人の希望どおりの職種・賃金・勤務条件が保障される意味ではありません。 |
応募前・定年前に確認
「何歳まで働けるか」は3段階で確認する
65歳まで働ける制度があっても、定年前と同じ役職、仕事内容、賃金、勤務日数が続くとは限りません。制度があるかだけでなく、実際に提示される労働条件を確認することが大切です。
定年後に外で探すなら
ハローワークの「生涯現役支援窓口」も利用できる
全国300か所のハローワークには、概ね60歳以上の求職者を対象とする生涯現役支援窓口があります。在職中の人も対象となり、これまでの就労経験、生活環境、年金の受給状況などを踏まえた職業相談・職業紹介を受けられます。
年表から見えること
「定年が延びた」だけではない3つの変化
定年年齢から、定年後の雇用へ
55歳から60歳への変化は定年年齢の引上げが中心でしたが、その後は再雇用などで65歳までつなぐ仕組みが中心になりました。
雇用から、多様な就業へ
70歳までの制度では、雇用だけでなく業務委託や社会貢献事業も含まれます。年齢だけでなく契約の形を確認する必要があります。
制度の有無から、条件の確認へ
65歳までの仕組みがほぼ定着した現在は、再雇用後の賃金、職務、勤務時間、契約更新など、実際の条件がより重要になります。
会社に残る以外の入口もある
定年後は、ハローワークでの再就職、シルバー人材センター、短時間勤務など、生活や健康に合わせた複数の選択肢があります。
定年前後の仕事探しに関連する記事
定年と高年齢者雇用についてよくある質問
昔は法律で55歳定年だったのですか?
いいえ。55歳定年は多くの企業で採用されていた慣行ですが、全国一律に55歳定年を義務付けた法律ではありません。1970年時点では、定年企業のうち55歳以下定年が58.6%を占めていました。
現在は65歳定年が義務なのですか?
一律の65歳定年義務ではありません。65歳未満の定年を設ける会社は、65歳までの定年引上げ、定年制の廃止、65歳までの継続雇用制度のいずれかを講じる必要があります。
2025年4月から何が変わったのですか?
継続雇用制度の対象者を旧基準で限定できた経過措置が2025年3月31日で終了しました。「すべての会社に65歳定年が義務化された」という変更ではありません。
会社は70歳まで雇わなければならないのですか?
70歳までの就業機会確保は努力義務です。また、選択肢には雇用だけでなく、継続的な業務委託契約や社会貢献事業も含まれます。70歳定年や70歳までの雇用を一律に義務付ける制度ではありません。
再雇用後も給料や仕事内容は同じですか?
同じとは限りません。再雇用により雇用形態、賃金、役職、仕事内容、勤務時間、契約期間が変わる場合があります。会社から提示された労働条件を書面で確認してください。
定年後の仕事はハローワークで探せますか?
探せます。一般の職業相談・紹介に加え、全国300か所のハローワークには概ね60歳以上を対象とする生涯現役支援窓口があります。対象年齢や利用方法は窓口によって確認してください。
シルバー人材センターとハローワークは何が違いますか?
ハローワークは求人への職業紹介や雇用保険などを扱う国の機関です。シルバー人材センターは、地域の高年齢者に臨時的・短期的または軽易な仕事などを提供する仕組みです。働き方や契約関係が異なるため、希望する収入・時間・仕事の継続性に合わせて確認します。
調査について
主な出典と更新方針
年表本文は、厚生労働省、JILPT、JEED、全国シルバー人材センター事業協会の資料を中心に確認しました。歴史上の定年慣行と、現在の法的義務・努力義務を分けて記載しています。
最終確認:2026年8月5日
法律、経過措置、企業の実施状況、ハローワークの支援内容は今後変わる可能性があります。制度改正や新しい「高年齢者雇用状況等報告」が公表された場合は、過去の経緯を残したまま「現在地」の説明と確認日を更新します。個別の雇用条件や年金の扱いは、勤務先、ハローワーク、年金事務所などへ確認してください。
